Microsoft Azure (以下、 Azure )は、 Microsoft 社が提供するクラウドプラットフォームです。 Microsoft Azure 認定資格 (以下、 Azure 認定試験)は、クラウドや Azure に関する知識を証明できます。近年多くのビジネスシーンで Azure が活用されているため、ビジネスパーソンに注目されている資格です。
本記事ではすでに Azure を活用している方だけでなく、これから Azure について知りたいと考えている方のために Azure 認定資格について解説します。
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Azure の AI 資格「 AI-900 」とは?難易度や学習方法を解説
Microsoft Azure 認定資格とは?
Azure は 2010 年に Microsoft 社が提供を開始したクラウドプラットフォームです。 IT システムの開発・運用に必要な仮想マシン、ソフトウェア開発運用のツール、クラウドストレージなど多くのサービスを提供します。
近年ではあらゆるシーンでクラウドの利用が進んでいるため、企業としてはスキルや知識をもつ人材を確保する動きがみられます。
資格を取得すると、 Azure に関するスキルや知識を現在の仕事に活かせるだけでなく、継続的なスキルアップを目指せるでしょう。
認定資格を得るためには、対象となる試験への合格が必要です。試験は初級、中級、上級にレベル分けされ、資格によっては複数の試験に合格すると認定されます。
また Azure 認定資格には期限があり、資格を維持するためには定期的な更新が必要です。
Microsoft Azure 認定資格の受験方法・料金
受験方法は紙ベースではなく、 PC を使ってオンラインで回答する CBT ( Computer Based Testing )方式が用いられます。受験センター以外に自宅からも受験できるため、近くに会場がない場合でも受験しやすいでしょう。
受験料は資格ごとに異なり、約 1 ~ 2 万円となっています。一例として基礎レベルの Azure 資格である AZ-900 の受験方法と料金をまとめました。
Azure Fundamentals ( AZ-900 ) |
受験料 |
13,750 円(税込) |
受験方法 |
CBT 方式 |
受験会場 |
|
Microsoft Azure 認定資格の有効期限
資格は以下の 3 種類に分けられています。
- Fundamentals
- Role-based ( Associate ・ Expert )
- Specialty
Fundamentals に属する資格には有効期限はありませんが、 Role-based と Specialty は取得後 1 年間の有効期限があります。
資格を維持するためには、有効期限が切れる前に更新テストを受けて合格しなくてはなりません。更新テストは無料で受験でき、 6 ヶ月ある更新期間であれば何度でも受験できるので、早めに更新テストを受けるとよいでしょう。
Microsoft Azure 認定資格を取得するメリット
クラウドプラットフォームの Azure は、多くの企業に導入されています。 資格を取得すれば以下のようなメリットを得られるでしょう。
- 専門知識・スキルの証明になる
- 日々の業務に活用できる
- スキルアップのきっかけになる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
専門知識・スキルの証明になる
IT 業界で求められる知識やスキルは幅広いですが、証明することは簡単ではありません。
Azure 認定資格は、証明できるスキルをレベルやロールによって細分化しています。そのため転職や就職時などに、取得している資格の種類によってどの程度 Azure を使いこなせるのかを簡単に証明できるようになるでしょう。
また Azure を導入している企業やこれから導入を検討している企業では、認定資格の取得が人事評価の材料になる場合もあります。
日々の業務に活用できる
Azure 認定資格は、 Azure の基礎から専門的な内容まで複数の試験が行われています。試験の合格を目指すうちに、日々の業務に必要な幅広い知識を身につけることが可能です。
また Azure をより効果的に活用したいと考えている方も、資格試験の学習を進めることで Azure への理解が深まり、さらに最適化した使い方ができるようになるでしょう。
スキルアップのきっかけになる
Azure にはさまざまなサービスがあり、機能を使いこなすには幅広い Azure の知識が必要です。 Azure の資格はレベルや役割別に用意されているため、基礎レベルの資格を取得したあとはさらに上級の資格を目指すことが可能です。モチベーションの維持にも効果的で、継続することで自然とスキルアップにつながります。
また Azure は日々アップデートされ新しい機能も増えています。毎年資格を更新するたびに、最新の情報を得られることもメリットです。
Microsoft Azure 認定資格の種類
Azure 認定資格はロール(役割)ベースと難易度別に分類されています。職場での役割や自分のスキルレベルに合わせて資格を選びましょう。ロールベース・難易度のどちらからでも、目的に応じて選択可能です。
ロールベース
現在就いている職種やこれから目指したい職種などに求められる役割に応じて、資格を選択できます。おもなロールには次のようなものがあります。
- Azure 管理者
- 開発者
- ソリューション アーキテクト
- DevOps エンジニア
- AIエンジニア
- データ サイエンティスト
- ネットワークエンジニア
- データベース管理者
- セキュリティエンジニア
- ID およびアクセス管理者
難易度別
ロールはさらに以下の難易度によって分けられています。
- Fundamentals (初級): Azure 初心者向け。基礎知識を証明できる。
- Associate (中級): Azure の特定分野の知識を持っている。 Azure の開発や管理ができる。
- Expert (上級): Azure の高度なスキルと知識を持っている。設計から実装まで行える。
この3つの難易度のほかに、特定の分野に特化した知識を証明する「Specialty (特定領域)」があります。
【対象職種別】 Microsoft Azure 認定資格一覧
ここでは、 Azure 認定資格の一覧を紹介します。具体的な職種別に適した資格を選定しているので、ぜひ参考にしてください。
一般開発者向け
一般開発者向けには次にあげる 3 種類の資格が該当します。
- Azure Fundamentals ( AZ-900 ・初級)
- Azure Developer Associate ( AZ-204 ・中級)
- DevOps Engineer Expert ( AZ-400 ・上級)
それぞれの内容を紹介します。
Azure Fundamentals ( AZ-900 ・初級)
Azure Fundamentals は、 Azure の基本的な知識を証明する資格です。クラウドや Azure に関する基礎知識やセキュリティについて学ぶことができます。
初心者だけでなく、すべてのロールにおける基礎知識を確認するために受けておきたいおすすめの資格です。
Azure Developer Associate ( AZ-204 ・中級)
Azure Developer Associate は、開発者向けの中級資格です。 Azure を用いたクラウドアプリケーションの設計・開発から管理までの専門的な知識が求められます。
クラウド環境でのシステム開発の経験や、 Azure に関する 2 年以上の実務経験がある人を想定した資格です。
DevOps Engineer Expert ( AZ-400 ・上級)
DevOps Engineer Expert は、 DevOps に関する上級資格です。 DevOps の高度な知識やスキルが求められ、 Azure DevOps だけでなく GitHub の知識も求められます。
そのため、インフラエンジニアやシステムエンジニアとして Azure でのシステムの開発や運用の経験がある人を対象としています。
また資格取得には Azure Administrator Associate ( AZ-104 ) か Azure Developer Associate ( AZ-204 ) の取得が必要です。
管理者・マネジメント層向け
Azure や Windows Server の管理者向けには 2 種類の資格があります。
- Azure Administrator Associate ( AZ-104 ・中級)
- Windows Server Hybrid Administrator Associate ( AZ-800 、 AZ-801 ・中級)
それぞれの内容を紹介します。
Azure Administrator Associate ( AZ-104 ・中級)
Azure Administrator Associate は、 Azure 管理者向けの中級資格です。求められるスキルは多岐に渡り、 OS やネットワーク、ストレージなど Azure の実装・管理・監視に関わる幅広い知識が問われます。
Azure 環境のサーバーエンジニアやインフラエンジニア経験者を対象としています。
Windows Server Hybrid Administrator Associate ( AZ-800、AZ-801 ・中級)
Windows Server Hybrid Administrator Associate は、 Windows Server の運用保守に関する中級資格です。 Windows Server 環境と Azure サービスの統合、オンプレミスでの Windows Server 管理に関する専門知識が求められます。
資格取得には Windows Server Hybrid Administrator Associate ( AZ-800、AZ-801 )の合格が必要です。
AI エンジニア向け
機械学習やデータ解析など AI (人工知能)分野の専門知識が必要な AI エンジニア向けには、次の 2 種類の資格があります。
- Azure AI Fundamentals ( AI-900 ・初級)
- Azure AI Engineer Associate ( AI-102 ・中級)
それぞれの内容を紹介します。
Azure AI Fundamentals ( AI-900 ・初級)
Azure AI Fundamentals は、機械学習( ML )や人工知能( AI )に関する基礎知識を証明できる初級資格です。知識の定着を確認するためだけでなく、これから ML ・ AI の知識を習得する場合にも適しています。
Azure サービスの基礎知識が求められますが、ソフトウェア開発が未経験でも受験可能です。プログラミングの知識があるとよいでしょう。
Azure AI Engineer Associate ( AI-102 ・ 中級)
中級資格の Azure AI Engineer Associate は、 AI エンジニアに向けた資格です。 Azure Cognitive Services などの Azure AI サービスを利用して AI ソリューションの設計と実装の知識を証明します。
AI によるソリューションを開発・提供するためのスキルが必要です。
データエンジニア向け
データ活用の基盤を作るデータエンジニア向けには、 2024 年に新たに追加された資格を併せて 6 つの資格があります。
- Azure Data Fundamentals ( DP-900 ・初級)
- Azure Data Engineer Associate( DP-20 3・中級)
- Azure Database Administrator Associate ( DP-300 ・中級)
- Azure Data Scientist Associate ( DP-100 ・中級)
- Fabric Analytics Engineer Associate ( DP-500 ・中級)
- Fabric Analytics Engineer Associate ( DP-600 ・中級)
それぞれの内容を紹介します。
Azure Data Fundamentals ( DP-900 ・初級)
Azure Data Fundamentals は、データエンジニア向けの初級資格で、基礎的なデータの概念と関連する Azure サービスの知識を証明します。クラウドや Azure の初心者が対象です。
データについての出題が多いため、データの基礎知識やデータ分析の知識が求められます。データベースに関する業務経験があれば取得しやすいでしょう。
Azure Data Engineer Associate ( DP-203 ・中級)
Azure Data Engineer Associate は、データエンジニア向けの中級資格です。 Azure のプラットフォームを利用してデータソリューションを開発・提供するスキルを証明できます。
受験者は SQL ・ Python ・ Scala といったデータ処理言語の知識が必要です。事前に Azure Fundamentals ( AZ-900 )、Azure Data Fundamentals ( DP-900 )に相当する知識を持っていると取得しやすいでしょう。
Azure Database Administrator Associate ( DP-300 ・中級)
Azure Database Administrator Associate は、 Microsoft SQL Server と Azure の SQL Database によって構築されたデータベースを管理・運用するスキルを証明できる中級資格です。
受験者にはオンプレミス・クラウド・ハイブリッドのデータプラットフォームの基礎知識が求められるため、 SQL Database の管理・運用の経験があると理解しやすいでしょう。
Azure Data Scientist Associate ( DP-100 ・中級)
Azure Data Scientist Associate は中級の資格で、データサイエンティストの経験がある方に向いている資格です。 Azure Machine Learning を用いた機械学習モデルの開発と運用・管理、また AI とクラウドの知識も証明できます。
受験者には Azure 、機械学習、 AI などの基礎的な知識が求められます。
Fabric Analytics Engineer Associate ( DP-500 ・中級)
Fabric Analytics Engineer Associate は、データアナリストを対象とした中級資格です。エンタープライズレベルのデータ分析に必要なデータ収集、システムの構築・管理のスキルが証明できます。
受験者には大企業のデータ分析ソリューションを設計や配置の経験が求められ、 Azure や Power BI に関する高度な知識やスキルが必要です。
Fabric Analytics Engineer Associate ( DP-600 ・中級)
Fabric Analytics Engineer Associate は、 2024 年 1 月に受験が開始されたデータアナリスト・データエンジニア向けの中級資格です。 Microsoft Fabric を使用したデータ分析に関する技術を証明します。
データレイクハウス、セマンティックモデル、データウェアハウスなどの基礎知識が必要です。
セキュリティエンジニア向け
情報セキュリティに特化した役割のセキュリティエンジニア向けには、 Azure Security Engineer Associate ( AZ-500 )の資格があります。
Azure Security Engineer Associate ( AZ-500 ・中級)
Azure Security Engineer Associate は中級資格で、 Azure セキュリティについての深い知識が求められます。
Microsoft Entra を用いたアクセス管理や ID 管理も含まれているため、Microsoft Entra の経験や、 Azure のセキュリティサービスを実装した経験があれば取得しやすいでしょう。
ネットワークエンジニア向け
ネットワークの設計・構築・保守と運営に携わるネットワークエンジニアには、 Azure Network Engineer Associate ( AZ-700 )の資格が適しています。
Azure Network Engineer Associate ( AZ-700 ・中級)
ネットワークエンジニア向けの中級資格である Azure Network Engineer Associate を取得すると、 Azure ネットワーク ソリューションの最適化・回復性・スケーリング・セキュリティなどのスキルや知識を証明できます。
受験者には、 Azure の基礎知識やネットワークリソース作成の知識が求められます。技術的な設問が多いため、技術者や開発者の経験があることが望ましいでしょう。
IT コンサルタント・アーキテクト向け
システムの設計に携わる IT コンサルタント・アーキテクト向けには、 Azure Solutions Architect Expert ( AZ-305 )があります。
Azure Solutions Architect Expert ( AZ-305 ・上級)
Azure Solutions Architect Expert は現在 2 種類ある上級資格の一つです。 コンピュータ・ ネットワーク・ストレージ・監視・セキュリティなど幅広い Azure ソリューションに関する専門知識を有することが証明できます。
受験者には Azure の開発・管理、 DevOps プロセスの経験が求められ、 IT 操作に関する高い知識が必要です。
また資格の認定を受けるには、 Azure Administrator Associate ( AZ-104 ) の合格も必要になります。
Specialty(特定領域)分野
Specialty は特定のジャンルに特化した資格で、難易度は中級レベルに相当します。専門分野の深い知識を証明するための以下の3種類の資格があります。
- Azure for SAP Workloads Specialty ( AZ-120 )
- Azure Virtual Desktop Specialty ( AZ-140 )
- Azure Cosmos DB Developer Specialty ( DP-420 )
それぞれの内容を紹介します。
Azure for SAP Workloads Specialty ( AZ-120 )
Azure for SAP Workloads Specialty は、 SAP システム管理者、ソリューションアーキテクト向けの中級資格です。 Azure を用いた SAP システムの設計・構築・保守に関する高度な知識を証明します。
SAP Workloads の Azure への移行といった理解が求められるため、 SAP の基礎知識が必要です。 Azure Administrator Associate ( AZ-104 ) を取得してから臨みましょう。
Azure Virtual Desktop Specialty ( AZ-140 )
Azure Virtual Desktop Specialty は、インフラエンジニアやネットワーク運用保守担当者などに向けた中級資格です。 Azure 上で実行される仮想デスクトップやアプリケーションの設定や導入、運用のスキルが証明できます。
Azure での仮想化・ネットワーク・ ID の知識が求められます。 Azure Virtual Desktop の環境を構築した経験があれば理解しやすいでしょう。
Azure Cosmos DB Developer Specialty ( DP-420 )
Azure Cosmos DB Developer Specialty は、クラウド環境でのアプリケーション開発者やデータベース管理者などに向けた中級資格です。「 Azure Cosmos DB 」に特化し、データベースの設計や構築、アプリの開発・管理のスキルを証明できます。
受験者には SQL・NoSQL データベースを熟知していることと、アプリ開発の経験、サーバー側のデータベース設計の経験が必要です。
Azure 認定資格の学習方法
Azure を提供している Microsoft ではさまざまな学習教材を用意しています。 Azure 認定資格取得を目指す場合には、次のような学習方法がおすすめです。
- ロードマップを作成する
- Microsoft Learn を活用する
- Microsoft Virtual Training Days に参加する
それぞれの内容について解説します。
ロードマップを作成する
Azure の資格試験は複数あるため、はじめにロードマップを作成することが大切です。目的のスキルを身につけるには、どの順序でどの資格を取得すればよいのかを決めておきましょう。継続的なスキルアップにつながります。
初心者の場合は基礎レベルの資格からスタートし、ロールに応じた中級資格を目指すのがおすすめです。最終的にはすべての資格を取得することを目標にすると、包括的に Azure の知識を身につけられるため、サービスを効果的に活用できるでしょう。
Microsoft Learn を活用する
Microsoft が提供する無料の学習用コンテンツの一つに Microsoft Learn があります。ハンズオン学習ができ、自分のペースで学べることが特徴です。
学習コンテンツはサインインせずに利用することも可能ですが、サインインすると学習状況が記録され、トレーニングが中断しても続きから再開できるメリットがあります。
トレーニングは複数の講座がまとまったラーニングパスに沿って進めるほかに、モジュールと呼ばれる講座を一つずつ学習することも可能です。
Microsoft Virtual Training Days に参加する
Microsoft Virtual Training Days は、 Microsoft 製品の無料オンライントレーニングです。 Microsoft の各製品に関するオンライン講座があり、希望の講座へ参加登録します。講座では講師に質問を送ることもできるため、疑問を解消しながら進められることがメリットです。
講座やコースは 1 日で終わるものもありますが、 2 日以上のレッスンもあるため計画的に参加しましょう。
Microsoft Azure 認定資格を取得してスキルアップを目指そう
Microsoft Azure 認定資格は、 Azure を提供する Microsoft 社による資格試験です。資格取得によってスキルの証明ができれば、就職や転職でのアピール材料になるだけでなく、多数ある Azure サービスの知識やスキルを広く深く身につけられます。
受験は CBT 方式で、試験会場以外に自宅でも受験が可能です。 Microsoft により豊富な学習コンテンツやオンライン講座が用意されているので、自分のペースで学習が進められるでしょう。
試験は難易度だけでなく、目指す役割ごとに選ぶこともできます。自分のスキルや経験に合った資格を見つけて、スキルアップに役立ててください。