Microsoft は 2016 年に Slack を 80 億ドルで買収することを検討していたもののこれを見送り、かわりに既存の Skype for Business モデルを拡大するという重大な決断をしたと言われています。そして、これが Microsoft Teams の誕生につながりました。2017 年のローンチ以降、Microsoft Teams は企業のコラボレーション サービスのあり方を変革してきました。
Teams に搭載されたボットは Microsoft Graph を利用しており、名前やトピックによる組織情報の検索を支援します。たとえば「ユーザー調査について知っている人は?」という質問をしたとき、組織内の該当者を回答として得られます。ボットにアクセスするには、Teams 上部のコマンド ボックスに「/担当者」と入力するか、左側のナビゲーション メニューの「…」をクリックします。
Microsoft Teams のみで使えるアプリとして特筆に値するのが、無料アプリの AVA と MyHub です。AVA は、Office 365 のどこにあるか分からなくなったコンテンツや削除されたコンテンツを復元できる強力なバックアップ用チャット ボットです。MyHub は、IT 部門を介さなくてもポリシーに基づいてユーザーにワークスペースをプロビジョニングできるクラウド ガバナンス アプリです。こういったアプリは、管理者を単純で煩雑な作業から解放し、ユーザーに自律性を与え、ユーザー自身による課題解決を促します。
会議
Slack と Microsoft Teams は、いずれもオンラインの音声およびビデオ通話が可能です。しかし、マイクロソフトは長年にわたって大企業や中小企業向けコミュニケーション アプリによるコラボレーションの経験を培っており、これに基づいて構築された Teams の会議機能が Slack を上回っているのは当然とも言えるかもしれません。
Microsoft Teams は会議の録画やスケジュールを設定した会議、背景のぼかし、私のお気に入りである画面共有といった便利な機能を、会議を開かずとも利用できます。
チャネル
Slack と Teams は、いずれもプライベート メッセージとチャネル機能を利用でき、左側のサイド バーから簡単にアクセス可能です。
Microsoft Teams ではアプリ内に構造化された「チーム」を作成してコンテンツ構造を強化することで、セキュリティとデータ管理機能を追加できます。部署やプロジェクトごとにチームを作成すると、専用の Office 365 グループが作成され、Office 365 で利用できるほかのアプリとチームが統合されます。
Microsoft Teams も Slack も、ISO/IEC 27001 等のコンプライアンス認証を受けており、データの暗号化や二要素認証といった機能を有します。しかし、Microsoft は 4 層にわたるコンプライアンスの枠組みを提唱しており、データ セキュリティ重視の姿勢を明確にしています。このうち、Microsoft Teams は D 層に分類されています。つまり Microsoft は Teams のコンプライアンスへのコミットメントを最高レベルとして設定しており、すべてのサービスがデフォルトで有効になっています。
さらに Microsoft Teams は、ほかのどのプラットフォームよりも広範囲にわたって管理制御が可能で、メンバーや所有者、ファイル、SharePoint の権限の変更など、きめ細かく制御できます。また、チャット コンテンツや Teams 内のファイルにも使える DLP やデータ ガバナンスの制御機能が用意されています。
主な相違点
Microsoft の製品である Microsoft Teams のプラットフォームは、Office 365 とシームレスに連携できます。Word ドキュメントや PowerPoint のスライド、OneNote で作業するにあたって Teams から離れる必要も、動画やドキュメント ファイルへアクセスするためにアップロードやダウンロードする必要もありません。
Microsoft Teams は、企業コラボレーションのニーズに重点を置いています。そのため、セキュリティやコンプライアンス対策が充実しているほか、ワークスペースとアプリケーションがよりシームレスに統合されています。
それに加えて Teams が含まれている Office 365 の最低価格プランは Slack の最低価格プランよりも料金が安くなっており、企業は Microsoft Teams に移行することでコストを削減できることが少なくありません。
Google は強固なパートナー エコシステムを構築しており、Google Meet や Google Workspace (旧称: G-Suite)、リアルタイム メッセージ アプリといったサービスを集約していくことが予想されています。そのため、これが Slack の終わりの始まりになるのでは、と考える企業も存在します。
しかし、現時点ではチャット コラボレーション プラットフォームの代表といえば Slack と Microsoft Teams であり、いずれも効率的でモダンな職場を実現するには欠かせない存在となっています。より優れたプラットフォームをめぐり激しい争いを繰り広げている Slack と Microsoft Teams、あなたはどちらを選びますか?