近年、企業規模を問わずサイバー攻撃の標的となるケースが急増しています。本記事では、情報システムの担当者が今すぐ始められる効果的なセキュリティ対策について解説します。
急増するサイバー攻撃と情報漏えいのリスク
昨今急増しているサイバー攻撃手法と、情報漏えいのリスクについて解説します。
セキュリティ対策が重要な理由
セキュリティ対策の重要性が高まっている背景には、サイバー攻撃の手法が日々進化していることがあります。攻撃者は企業の弱点を狙い、古いソフトウェア、脆弱なパスワード、セキュリティ意識の低さなどを巧みに利用します。
最新のサイバー攻撃手法と情報漏えいの関連性
現在、特に警戒すべき攻撃手法として、以下が挙げられます。
1.フィッシング
フィッシングは、偽のウェブサイトやメールを使って個人情報を盗み取る手法です。最近では、Microsoft 365を狙ったフィッシング攻撃が増加しています。攻撃者は、本物そっくりの偽のログイン画面のリンクをメールで送付し、ユーザーのアカウント情報を盗み取ろうとします。実際の事例として、Microsoft 365利用企業において、従業員がフィッシングメールのリンクをクリックし、アカウントが乗っ取られました。攻撃者は社内の機密情報にアクセスし、重要なデータが流出する事態となりました。
2.ランサムウェア
ランサムウェアは、データを暗号化して身代金を要求する悪質なマルウェアで、攻撃者が盗んだデータを公開すると脅迫するケースも増えています。特にランサムウェア攻撃の影響は単一企業にとどまらず、サプライチェーン全体に波及しています。例えば、部品供給会社がランサムウェア攻撃を受け、その結果大手自動車メーカーの生産ラインも停止に追い込まれるという事態が発生しました。
3.ゼロデイ攻撃
ゼロデイ攻撃は、セキュリティの脆弱性が発見されてから修正されるまでの間隙を突く攻撃です。この攻撃はときに、開発元さえも認知していない脆弱性を狙うことがあります。例えば、社内システムに不正アクセスして乗っ取り、システムに接続するすべての端末にマルウェアを配布したり、VPN機器に不正アクセスして認証情報を盗み取ったりするケースがあります。実際の事例として、特定の共有フォルダがゼロデイ攻撃による不正アクセスで、約200人分の個人情報が流出するという事態が発生しました。
もはや規模や業種に関わらず、全ての企業がサイバー攻撃と情報漏えいのリスクにさらされているといえるでしょう。
セキュリティインシデントの発生メカニズム
サイバー攻撃は企業内部の弱点を巧みに突かれていることが発生メカニズムとなっています。
意外と多い内部からの脅威
セキュリティリスクは外部からの攻撃だけでなく、内部からも発生します。従業員の不注意や内部犯行など、組織内部から発生するセキュリティリスクは想像以上に高いのが現状です。これには意図的な行為だけでなく、セキュリティ教育の不足による過失も含まれます。
狙われやすい弱点
攻撃者は企業の弱点を狙います。古いソフトウェア、脆弱なパスワード、セキュリティ意識の低さなどが典型的な弱点です。例えば、未更新の古いソフトウェアは脆弱性を突かれる危険性があります。
効果的なセキュリティ対策
対策① パスワード管理と多要素認証
強力なパスワードの設定と多要素認証の導入は、最も基本的かつ効果的なセキュリティ対策です。パスワードマネージャーを導入し、各アカウントに固有の強力なパスワードを設定することをおすすめします。さらに、多要素認証を導入することで、仮にパスワードが漏えいしても、第三者がアカウントにアクセスすることを防ぐことができます。
対策② 従業員教育の重要性
定期的なセキュリティ研修や啓発活動を通じて、組織全体のセキュリティ意識を高めることが不可欠です。フィッシングメールの見分け方、安全なパスワード管理の方法、不審な添付ファイルの扱い方などを教育しましょう。
対策③ 最新のセキュリティツール活用法
AIや機械学習を活用した最新のセキュリティツールは、複雑化する脅威に対する強力な防御手段となります。例えば、エンドポイント検知・対応(EDR)ツールは、未知の脅威にも対応できる可能性が高く、多くの企業で導入が進んでいます。
対策④ 定期的なバックアップの実施
ランサムウェア対策として、定期的なデータバックアップは極めて重要です。クラウドストレージとオフラインストレージを組み合わせた多層的なバックアップ戦略を採用することで、万が一の際にもデータを復旧できる可能性が高まります。
当社バックアップソリューションの導入事例と製品紹介、下記からご覧いただけます。
★導入事例 – テクバン株式会社様
インシデント発生時の対応策
完璧な防御は現実的ではありません。そのため、インシデント発生後の迅速かつ適切な対応が被害を最小限に抑える鍵となります。ここではその対応策を紹介します。
対応策① インシデント対応プランの作成と訓練
事前に詳細な対応プランを策定し、定期的な訓練を実施することで、実際の危機に効果的に対処できます。プランには、初動対応、被害の特定と封じ込め、復旧手順、関係者への連絡など、具体的な手順を含めましょう。また、年1回はシミュレーション訓練を行い、プランの実効性を確認することが重要です。
対応策② 復旧と再発防止
インシデントから得られた教訓を分析し、セキュリティ対策の継続的な改善につなげます。どのような脆弱性が攻撃されたのか、なぜ既存の対策で防げなかったのかを検証し、再発防止策を講じましょう。また、インシデント対応の結果を文書化し、組織内で共有することで、全体的なセキュリティレベルの向上につながります。
まとめ:今日から始める、情シスのためのアクションプラン
サイバーセキュリティ対策は段階的に進める必要がありますが、今日から始められる重要な施策があります。全社的なパスワードポリシーの見直しと多要素認証の導入、定期的な従業員向けセキュリティ教育、適切なセキュリティツールの評価と導入、そして定期的なバックアップシステムの確認が基本となります。さらに、インシデント対応プランの作成と定期的な訓練を通じて、実践的な対応力を養うことが重要です。
本記事で紹介したこれらの対策をひとつずつ着実に実施していくことが重要です。情報システム担当者の皆さん、今日からセキュリティ対策を強化し、サイバー攻撃に強い組織づくりを目指していきましょう。